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KPの中でもかなり初期の製品と思われる Il-10 を作ってみました。凸ながら美しいパネルラインを持つこのキット、これをどう活かすかが今回のテーマです。

☆  ☆  ☆  主翼の工作  ☆  ☆  ☆

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箱を開けると左右一体の大きな主翼と4パーツからなる水平尾翼が目に付いたので、真っ先にランナーから切り離しました。ランナーが空くとそれだけで進んだ気分になる効果を利用してモチベーションを高める作戦です。

主翼前面の空気取入口底面や主脚庫前方の突起には大きな亀裂ができるので、開始早々本格的な修正作業が楽しめます。空気取入口は全面をプラ板で塞ぐと浅くなり過ぎるので凹部だけプラ板をあてて平らにならしました。

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他にも翼端が欠けていたり、全周に渡って上下パーツのどちらかが大きくどちらかが小さいため上下のエッヂが合っていないなど、工作好きのモデラーにはたまらない魅力満載です。作例では瞬着と溶きパテで修正してありますが、こういうキットは作り手の個性によって仕上がりが変わって来て、それがいわゆる「キットの味」となります。

☆  ☆  ☆  胴体 〜 士の字  ☆  ☆  ☆

続いて胴体の工作に入ります。胴体接着と言えば通常コクピットの工作が必須ですが、このキットのコクピットパーツは 計器板,背もたれ,前席 の3つだけで、しかも計器板以外は胴体接着後でも取り付け可能です。結局、胴体接着時に嵌め込まなければならない部品は、計器板と、機首のプロペラ軸受けのみ。両パーツともろくな取り付けガイドがないので位置決めに苦労しました。凸モールドの消失を最小限にするため、合わせ目に段差ができないように注意しますが、機首部では左舷パーツが右舷パーツよりひとまわり小さくて、どうしても段差ができます。
 
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上は士の字化工作直前の主要パーツ集合写真です。主翼と胴体間にはしっかりした取り付けガイド(主翼側:穴2個,胴体側:突起2個)がありますが、これに従うとしっくり合いません。作例ではそれに気付かずに当たっていそうな箇所をどんどん削りました。いくら削っても合わないので最後に取り付けガイドを疑い、胴体側の突起を切り飛ばしたところ、ウソのようにぴったり合いました。おかげで主翼と胴体の間には自分で作った大きなすき間が残り、修正の規模が拡大。できるだけ消したくない凸モールドに大打撃を与える結果となりました。これからこのキットを作る方がいらっしゃいましたらこの点特にご注意ください。

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機首下面の接合部は翼付け根の空気取入口に合わせて胴体の一部が窪んでいて、まるで魚雷発射口の様になっています。ここも自分の勘違いで削り込んだすき間がひどい上、形状が微妙なので修正に手間取りました。短気は禁物です。
 
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水平尾翼の取り付け。上の写真は修正後ですが、取り付け直後は昇降舵と胴体の間に残っている段差が前方まで続いていると思ってください。私個人的にはここにすき間があるのは我慢できないのでガッチリ埋めました。 以上、随分作り難いキットの様に書いてしまいましたが、主翼・尾翼とも位置が決まらなかったり大きさが合わない様なことはないので基本的な合いはしっかりしています。要は仮組みを十分行い、この作例の様なポカをやらないで手際よく組んで行けば問題ありません。

☆  ☆  ☆  小物作り  ☆  ☆  ☆

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このキットのパ-ツ数は全部で51ですが、およそ40個は小物です。通常のWWUソ連戦闘機に比べると、爆装関連,後部機銃,主翼機関砲などのパ-ツがあるために小物の数が増えています。今時のキットではディティ-ルを保ちながらも小物を一体成形してパ-ツ数を減らす様に工夫されていますが、このキットではとても素直にバラバラに成形してあります。例えば爆弾は上下2分割、爆弾架と合わせて4パ-ツ、これが2組でもう8パ-ツといった具合。

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従って個々の部品は小さいものが多くなっています。中でも後部機銃の照星は左写真の白い正方形ですが、シャ-ペンの芯先と比べてその小ささが分かると思います。その右のル-プアンテナと主翼に付く機関砲類、それに爆弾架は床に落とすと見つけ難いので保管に注意が必要です。


☆  ☆  ☆  コクピット 〜 基本塗装  ☆  ☆  ☆

本体の工作に戻ります。前述の通りこのキットの座席は胴体組立後に取付けできるので随分楽です。キットのパーツに後席は無く、フィギュアを直接前席との隔壁に接着する仕様ですが、フィギュアを乗せない場合はがらんどうなのでジャンクストックから適当な座席を選んで貼り付けました。実機の後席がどうなっているのか良く分からないのですが、キャノピーを付けてしまえばあまり見えないのでこれで良いことにしてしまいます。キャノピーと胴体の合いはKPにしては優秀ですが、それでも一部にすき間ができるので無修正というわけには行きません。

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塗装に入る前に主翼に機関砲とピトー管を取付けます。キットでは翼下面パーツにだけ溝が切ってありますが、これだけでは到底取付けられないのでドリルで穴を開けて差し込みました。取付け強度が不安だったので付け根に瞬着を盛り、乾燥後修正しましたが、曲率が鋭い翼前縁から立ち上がっている細い円柱の根元を整形するのはかなりの手間です。

塗装はまず缶スプレーのサーフェーサーを全面に掛けて工作のアラを潰した後、下面色のライトブルーをスプレーしました。

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スプレ-による塗装はここまでで上面は筆塗りに転じます。この作例の塗装では上面は緑一色ですが広い面積を一気に塗るのではなくて、キットの凸モ-ルドに沿ってマスキングし、パネル毎の小面積に小分けしながら塗り進めて行きます。塗り重ねは2回。同じ色で塗るのに細かくマスキングするのはムダに見えますが、こうするとマスキングテ-プを剥がした後に残る塗膜の段差が工作で消えた凸モ-ルドを補い、パネルラインを復活させることができます。この方法は以前から部分的に取り入れていたのですが、今回は全体的に実施してみました。結果はまずまずで、今後凸モ-ルドキットを作る時の標準にしようと思います。

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☆  ☆  ☆  仕上げ塗装  ☆  ☆  ☆

基本塗装が終わるとグッと完成に近付きます。しかし、ここから先の工程は失敗すると取り返しが付かないことが多いので、まだまだ半分と改めて気を引き締めました。

仕上げ塗装の取り掛かりは下面から。「キットの凸モールドを活かす」というのが今回のテーマなので、手間を承知で凸モールドに墨入れしました。方法はエナメルで凸モールドをなぞり、はみ出した部分を爪楊枝でこそげ落すという原始的なやり方です。この方法は以前同じKP1/72のSu-7で経験済で、案の定物凄く時間が掛かりました。どうにか下面だけ終わらせましたがもうこれ以上根気が続きません。
 
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下面のエナメルを定着させるため早めにトップコートしなければなりません。何度もコートするのが手間なので上面の墨入れ前の段階でデカールを貼りました。尾翼の2番は換えが無かったのでキット附属のデカ-ルを使ったところ、トップコートで見事に縮れてしまいました。赤星は別売りデカールを使ったので縮れませんでしたが、こちらは表面の凹凸に馴染み難く、マークフィッターでねじ伏せたら何箇所か穴が開きました。結局番号はおおかた削り落として貼り跡を頼りにエナメルで手描き、赤星も随分とタッチアップしています。

下面のエナメルによる墨入れで精魂尽き果てたので、上面はエナメルではなく油採で墨入れしました。油採の黒をペトロールで薄く溶いて凸モールドをなぞり、乾かないうちにはみ出した部分をぼかす様に拭き取って行くと、下の写真のごとく結構良い感じになる事を発見。模型を作り始めてもう何十年も経つけれど、これでようやく凸モールドへの墨入れ方法をマスターした気がします。全くの自己流ですが、この記事をご覧になっている皆様に少しでも参考になれば幸いです。

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下面はエナメルによる墨入れの上にさらに油彩を掛けたので、コントラストが強過ぎて劇画風になってしまいました。下面も初めから油彩の墨入れにしておけば良かったわけですが、エナメルの上にラッカーでトップコートしてしまったのでもうやり直しはできません。こういう点が「取り返しが付かない」例と言えます。尚、油彩はラッカーの塗膜を全く侵食しないので、気に入らなければ何度でも洗い落としてやり直しができます。その特性を活かして下面で再生し切れなかったパネルラインは油彩で描き込んであります。

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☆  ☆  ☆   完  成   ☆  ☆  ☆

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最終工程は小物の取付けです。小物は特に脚まわりに集中していて、左の写真で片翼8個、胴体含め全部で22個の小物を付けるのに足掛け2日掛かりました。脚柱と主翼間の取付けガイドはしっかりしていますが、その他はほとんどガイドらしいガイドがありません。特に爆弾架に対する爆弾の据わりが悪くて、前後位置,水平度,爆弾の尻尾の回転角度を左右合わせ込むのに苦労しました。爆弾と爆弾架が一体にモールドされていれば苦労はないんですがね。それと、脚庫前半の細長い脚カバーの接着にも注意が必要です。最後の難関は後部機銃の接着。うっかりすると機銃を胴体内部に落とします。

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色々書いてきたけれど、完成すると実機の雰囲気が良く伝わって来る好キットです。今回はキット本来の凸モールドを活かすことをテーマにしていましたが、マスキング+筆塗りによるパネルラインの再生と、凸モールドへの墨入れで一定の成果が得られたので納得できました。

本人満足度 ★★★★

 
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