TOPへ戻る リトバックの休日 制作記 リトバックの休日
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1/72Yak-1を単品で作ってしばらく経ったころ、ソ連の有名な女性パイロットであるリーリャ・リトバックのフィギュアを手に入れました。Yak-1はちょうどこのリトバックの乗機のマーキングで作っていたので、機体とフィギュアを組み合わせてジオラマにすることにしました。

☆  ☆  ☆  素材  ☆  ☆  ☆

まずは素材集めから始めます。ベースは合板に草原マットを敷くとして、問題は草原の上に載せるフィギュアや小物など。Yak-1が1/72でリトバックが1/32ですから、フィギュアを手前に置き、飛行機を奥に置いて遠近感を強調する「パースモデル」にします。各種スケールのフィギュア合計7体にテーブルや椅子、木立なども加えてバランス良く仕上げることを目指します。

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1/35に加え、1/48フィギュアもICMから調達。
ICMにはお世話になります。

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 1/72フィギュアは何と言っても
Preiser。品揃えが違います。
脇役の木立は鉄道模型用の
キットを使いました。
 
使ったキットは合計5つです。まず主役のリトバックは直上写真・左端のMASTER BOX 1/32 Famous Pilots of WWII Kit1から持って来ました。箱絵の左下、短い金髪で左手を胸にあてている様に見えるのがリトバックです。実はこれ、野に咲く小さな花を摘んで作った花束の、花の香りをかいでいるんです。資料によれば、リトバックは熾烈な戦場に在ってもなお最期まで、女性らしさを失わなかったのだそうです。次にこのジオラマで大きな役割を果たすのは、上段左側の ICM 1/35 Soviet Millitary Servicewomen です。リトバックが所属していたのは女性だけで編成された俗称「魔女飛行隊」で、地上の整備員や支援要員なども全て女性兵士が動員されていました。そこで、ICMのこのキットを使って、ちょっと華やかなジオラマにするつもり。テーブルや椅子、その他小物もこのキットのものを使います。そして近景と遠景をつなぐ役割の1/48フィギュアを1体。これも ICM の1/48 Soviet Air Fource Pilots and Ground Personel に収録されている女性兵士に来てもらいます。フィギュアの最後は Preiser 72528 から1/72の民間人女性2体を小改造して女性整備員に仕立て、機体のそばに置いてパースモデルにおける飛行機の大きさ/遠さを表現します。あとは鉄道模型用の樹木を使って全体のメリハリを調整します。

 

☆  ☆  ☆  ベース  ☆  ☆  ☆

素材が揃ったらベースの工作に入ります。ベースとなる円板は家の近くのホームセンターにある木工サービスコーナーで、合板を円形に切り出してもらいました。結構高い加工賃を取られたけれど、自力ではできないからしかたないです。この円板にYak-1とフィギュアを仮置きして配置を決めて行きます。スケールがバラバラなので上から見たのではジオラマとして成立しません。

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しかし上写真のごとく、フィギュアを手前に、
飛行機が奥になる様にして水平方向から見ると、遠近法の慣れによってまともな風景に見えて来ます。これが「パースモデル」です。・・まともに見えますよね? ・・まともに見えるでしょ? ・・見えると言って、お願い! 

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次に、円板に芝生シートを貼り付けて草原にするのですが、真っ平らな円板に直接芝生シートを貼り付けると真っ平らな草原が出来上がり、とても不自然です。そこでまず円板上に紙粘土を薄く敷いて多少の凹凸を作り、その上に芝生シートを貼り付けました。こうすればとても自然な感じの草原になってくれます。ベース,紙粘土,芝生シートの接着は木工ボンドでOKです。さらにのっぺらぼうの草原の一隅に木を植えます。「木」は鉄道模型用の物を適当に買って来ました。Nゲージって書いてあるのでスケールは1/150なんですが、「木」なんてものは始めは小さくてだんだん大きくなるのだから、大きさなんか関係ないですよね。特に今回はスケールバラバラの変則ジオラマなんで、1/150だろうがなんだろうが関係ないや!(半分ヤケ)。さらにICMのキットに入っている屋外用のテーブルと長椅子を完成させ、木と一緒に仮置きしてみました。ここまではまずまず順調でイイ感じです。


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☆  ☆  ☆  フィギュア  ☆  ☆  ☆

ベースができたのでいよいよフィギュアの制作に突入します。フィギュアは全部で7体。内訳は1/72:2体,1/48:1体,1/35:3体,そして1/32が1体です。まずは制作経験のある1/72から。1/72のフィギュアは小さくて難しいと思われがちですが、その小ささが幸いして完成しても良く見えないので、テキトーに塗っとけばOKなんです。今回も1/72の2体はあまり苦労せずに出来上がりました。(↓)
06 07 続いて次に小さい1/48の1体に取り掛かったのですが、う〜ん難しい。やはり1/72とは世界が違いますね。1/72はラッカー系塗料で塗り分けてからエナメルで墨入れしただけですが、1/48でそれだけだと「おもちゃっポさ」が抜けません。色々試行錯誤した結果の到達点が左写真(←)なんですがいかがでしょうか?写真ではちょっと顔が白くなり過ぎたけれど、実物ではそれほどでもないのでそのままにしておきます。

そして遂に1/32,1/35のフィギュアの塗装に入ります。大きいフィギュアを塗るのは初めてだったので、本棚にあった右の本を引っ張り出して読みました。この本は日本では昭和56年(1981)に出版された翻訳もので、元本が出たのはもう四半世紀も前のことですが、プラモデルを中心としたジオラマに関しては今でもバイブル的な存在として崇められています(2017年・記)。フィギュアについてはこの本の第五章に「人形のポーズと塗装」と題して詳細に解説されています。この本を熟読し、本に書いてある通りにやって見て、私は次の結論に達しました。『 フィギュアの塗装とは、人形の表面をキャンパスとし、そこに肖像画を描く作業である。』 いや難しいです、本当。 飛行機だったら比較的平らな面を指定された色で塗ればおおよそ出来上がりますが、フィギュアでそれをやっただけでは全く人間に見えません。下の写真・左側がそれですが、この状態だと単に基本色を置いたに過ぎないことが良く分かります。これでもラッカー系塗料を6色も使っているんですけどね。

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上写真・左側の状態を出発点として、「肖像画の描き込み」をやって行きます。使う塗料は油絵の具(油彩)です。油彩は飛行機模型でもウェザリングに使うことがあるので、全くの未経験ではありませんが、「肖像画」となると勝手が違うので苦労しました。若いうちにもっと油絵(を描くこと)に親しんでおけば良かったとつくづく思いましたが後の祭りです。油絵では光と影を巧みに描き分けるのがコツなんですが、どうしても影の部分が汚れた様になってしまって上手く行きません。顔の表情にしたって本当はもっと若々しくしたかったのですが、残念・ご覧の通り三人のオバサンになってしまいました。これ以上手を入れてもどんどん悪くなるばかりなのでこの三体はこれで終了とします。残るは主役のリトバックのみ。リトバックを最後に残したのは、これまでの三体で少しはコツが飲み込めることを期待したからなんですが、果たしてどうなることやら・・。

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結果は・・上の写真の通りです。自分では精一杯頑張ったつもりです。でもやはり、リトバックの凛とした美しさを再現するには至りませんでした。強いて言えば上写真・右端の、顔が見えない1枚が一番似ているのではないでしょうか。リトバックさん、ごめんなさい!これが私の限界です。

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これでジオラマに必要な7体全て揃いました。並べて見るとなかなかの壮観? 一番気合いを入れて作ったのはもちろん右端のリトバックだけれど、自分で一番出来が良いと思うのは左から2番目の、1/72「名もない女性整備兵B」です。やはり1/72メインの飛行機モデラー(=私)にとって大スケールのフィギュアは別世界でした。ここに掲げた写真も、フィギュアを専門にやっているモデラーさんから見れば指摘事項が山盛りでしょう。


☆  ☆  ☆  仕上げ  ☆  ☆  ☆

最後の工程はベースに飛行機やフィギュアを取り付けて行く仕上げ段階です。ここは簡単に仕上がるかと思いきや、色々と問題が出て難航しました。最大の問題は主役であるリトバックの右足が地面に着かないこと。下・左の写真がそれですが、右足の靴底が地面から2mmほど浮いています。原因は草原をリアルに見せるために付けた凹凸のせいで、リトバックの立ち位置の左右靴底で差ができたためです。他のフィギュアはほぼ足を揃えているので「浮き足」は免れましたが、微妙に前かがみだったり横に傾いていたりで調整が必要です。肝心の飛行機も左の主脚が草原の凹部に嵌まり込んで左に傾いてしまいました。でもこれは草原の飛行場なら有り得ると判断して修整しないつもりです。

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宙に浮いたリトバックの右足は地面を盛り上げて処理しました。まずはベースの芝生シートの残りを靴底の4倍ほどの楕円形に切り、ベースと靴底の間に挟みます。それだけでは継ぎはぎした跡が見えるので、芝生シートをしごいて集めた繊維を境界に振り掛けてごまかしています。

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続いて小物に掛かります。ICMのキットに付属している小物は、携帯レコードプレイヤー,ノート,コーヒーサーバー,それに洗濯物です。その洗濯物がこのキットの売りなんですが今回は使わず、代わりにマグカップを自作してみました。ステンレスパイプを切ってプラ板で作った取っ手を貼り付け、白とグレーで塗装してあります。パイプは外径3mm,切断長さ3.5mmで、私にとってはとても小さくて苦労しました。でも 1/700の艦船を作るモデラーさんから見ればまだまだ全然大きい部類だと思います。あとノートはキットのものは三角定規が付いた図面の様なものだったので使わず、プラ板から自作しました。
下にあるのは1円玉と10円玉 

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フィギュアをベースに取り付けて一通り完成となりました。今回は慣れないフィギュアの塗装で苦労したけれど、フィギュアを大小7体も並べたので枯れ木も山の賑わいと言うか、まあどうにか見るに耐えるものにはなったと思います。だがしかし、広めのベースにフィギュアや飛行機を分散して配置したため、一見してどれが主役か分からないジオラマになってしまいました。いやはや、ジオラマは個々のアイテムの完成度もさることながら、全体の配置・バランスが難しいですね。



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