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所属している模型クラブの展示会用に作り始めたBe-6。結局展示会には間に合いませんでしたが、8ヶ月という、私としてはまずまずのペースで完成しました。今回は結構手を入れていますので、ここではその制作過程を振り返って見ましょう。

☆  ☆  ☆    凸 → 凹 変 換 ・ ま ず は 試 し 彫 り    ☆  ☆  ☆

このキットは古いキットで簡素な造りですが、基本がしっかりしているので、これをベースに色々と手を入れて作ることにしました。まずは筋彫りの凸→凹変換、次にエンジンの改造、そして機体内部の再現が課題です。

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凸モ-ルドのキットを凸のまま作ることが多い私は凸凹変換は苦手なので、最初にフロ-トを作って感覚を掴むことにしました。結果は写真の通り(左:変換前,右:変換後)まあまあ行けそうです。まだまだ先は長いけど、とりあえずできることは分かったのでやる気が湧いて来ました。 

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次に水平尾翼に掛かります。上写真のごとく、パネルラインは全て直線です。これをなぞって凹にして行く方法もありますが、私の技能ではどうしてもヨレてしまいます。そこで考えた方法は、直線の両端にマジックで印を付けておき、凸モールドを削り落として平らにしてから印を頼りに筋彫りを引く方法です。これだとヨレや途切れのない真っ直ぐな筋彫りを引くことができます。

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続いて垂直尾翼ですが、これは水平尾翼に比べて格段に難しいです。と言うのは一部曲線がある上、直線部分も短い線が入り組んでいて、印を付けて凸モールドを削り落としてから筋彫りを引くという手法が使えません。しかたがないので凸モールドをエングレーバーでなぞって凹にする方法にチャレンジしました。結果は、あちこちはみ出したり一部線がよれたりしましたが、おおむね満足できる筋彫りが引けました。このキットの凸モールドはとてもしっかりしていて、凸線の幅と高さがなぞり彫りするのにちょうど良く出来ています。穿った見方をすれば、このキットはなぞり彫りによる凸→凹変換を前提として作られているのかも知れません。そんな訳で今回の筋彫りが何とか上手くできたのも、自分の腕ではなくてキットのおかげです。

 

☆  ☆  ☆    主 翼 の 工 作    ☆  ☆  ☆
 
主翼のパネルラインは長い直線が多く、所々あみだくじの様に前後方向の線が入る程度です。そこで「なぞり彫り」は避け、水平尾翼のときと同じ方法で筋彫りを引きました。すなわち、ラインの両端に印を付けてから凸モ-ルドを削り取り、その後、印を頼りにガイドテ-プを貼って直線の筋彫りを引きます。これをラインの数だけ根気よく繰り返します。  
 

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彫り終わったらサフ掛けして全体をひと均し
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 切取った部分を内側に貼付ける 黒瞬着を盛って平滑化

さて、Be-6のエンジンは機軸に対して上向きの角度を持ち、さらにエンジン自体も翼の上側に寄せて取付けられているのが大きな特徴なんですが、キットではエンジンが機軸に水平に付いてしまい、これがこのキット最大の欠点になっています。大仕事になるけれど、ここはひとつ改造することにします。そこでまず、主翼側、エンジン取付け基部の下面をU字型に切除しました。とにかく余剰な下半分のボリュームを減らし、上へ上へと寄せて行く作戦です。切り取ったU字型部はポッカリ空いた開口部の内側から貼り付けて底板とし、凹部に黒瞬着を流し込んで乾燥後に削り込みました。これでひとまず主翼の工作は終了です。 



☆  ☆  ☆    エ ン ジ ン 大 改 造    ☆  ☆  ☆

エンジン取付け角度を上向きにし、取付け位置を持ち上げるためにはエンジンナセルのパーツにも大幅な改造が必要です。まずは位置が間違っている排気管を模型用ノコギリですっとばします。切った排気管は後で使うのでできるだけきれいに切り取りました。

次に空気取入れ口ですが、実機はカウリング先端にあるのに対し、キットはだいぶ下がった位置に付いています。これをどうやって修正するかしばし考えて出した結論は始めにプラ板を三日月形に切り出し、キットの空気取入れ口を塞ぐ位置とカウリング先端に近い位置の2か所に接着します。その上に0.2mmプラ板を曲げて強引に接着した後、すき間にエポキシパテを充填して、空気取入れ口の大まかな形を作ります。それが2段目写真左端の姿。その後はパテの余剰部分をカッターで大まかに切除した後、#400→#800の順でペーパー掛けして形を整えて行きます。さらに細かな凹凸を均すため、全体に溶きパテにサーフェーサーを混ぜたものを塗り付け、乾燥後に#800でペーパー掛けしました。特に空気取入れ口の内部は溶きパテ+サーフェーサーをたっぷり塗って厚い塗膜を作り、ルーターで整形しています。

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エンジンはナセルと一体成型でディティール不足だけれど、これはこのキットの個性として尊重し、精一杯塗装して終了としました。次に排気管ですが切断直後の状態では基部が短いため、プラ棒を継ぎ足した上からエポキシパテで補強。これを出発点にして削り込み、何とか左写真の状態まで持って来ました。元々は埋まっている排気口をドリルで開口し、基部には取付け用のステンレス線を仕込んであります。この段階で単品で見ている限りではまずまずと言った所でしょうか。
 

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こうして改造したエンジンナセルを、主翼側取付け基部の下端に合わせて取付けると上端が良い具合に突出して来ます。そこで今度はナセル上端に合わせてエポキシパテを大量に盛り付け、取付け基部の上半分をボリュームUPしました。整形する過程で5mmのプラパイプを嵌め込んで空気排出口を追加。最後に排気管を正しい位置に接着してエンジン大改造完了です。

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☆  ☆  ☆    胴 体 の 工 作    ☆  ☆  ☆

下の写真、左側は胴体パーツの初期状態です。くっきり入った凸の筋彫りとコクピットが塞がっているのが分かると思います。この筋彫りを凸→凹に変換し、かつコクピットを開口したものが右側の写真です。主翼の工作で大分このキットに慣れて来た様で、筋彫り変換手術は思ったより上手くできました。それでもかなりあちこちはみ出したりズレたりして塗料と瞬着で埋戻しています

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さて、このキットはコクピットが塞がっていたことからも分かる様に、機体内部のパーツは一切ありません。機体は大型なのでコクピットも広いし、機首の透明部分も相当な面積があるので完成後も中は見えるはず。そこで、無い物は作ろうということで、まずはシートを作り始めました。方法は至って原始的で、左写真のごとく、プラ板を切って作ったパーツを貼り合わせて行きます。作ったシートの数は操縦席2、機首1、機尾1の合計4個。ちょっと薄っぺらい感じがしますが、1/72で小さいし、最終的にあまり見えない(と思う)ので、これで良いことにします。 

機体内部のスクラッチはあまり複雑な構造物は作れませんが、床板、計器板、サイドパネル位なら作れると踏んでプラ板から切り出しました。
 
 
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上写真の黒くてやや大きい板3枚が床板です。左上が操縦席、中央下が機首窓の後方、右上が後部銃座。その他小さ目の板はサイドパネルや隔壁になります。
 
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機首内部は操縦席と機首窓後方の二階建てにします。何回も仮組みしながら、それぞれの床板をささえる細長い角棒を接着。その後サイドパネルのプラ板を適当に貼り付けました。次に墨入れして立体感を出した後、デカールのストックから合いそうなものを探して貼って行きます。この辺は実機の資料が見つからなかったので全くの空想で作っているのですが、内壁がツルツルののっぺらぼうよりはマシということにさせてください。
 

そして遂に胴体を接着。合いは良好ですが左右の反りが合わないため、接着剤が乾くまでゴムバンドで締め付けています。右写真2枚は透明パーツを付ける前のコクピットと尾部銃座。内部の再現はまずまず思い通りに仕上がりました。

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続いて左右胴体の継ぎ目を消し、操縦席や後部銃座など開口部の縁を整えて行きます。このキットは基本的な合いは良いものの、図体が大きいので継ぎ目も長く、それなりに手間取りました。次に、この時点で透明パーツを付けてしまいます。理由は士の字になってからでは翼が邪魔になって透明パーツと胴体の接合部の修正がやり難いからです。案の定、機首の観測窓と操縦席のキャノピーは所々胴体との間にすき間ができたのでパテ埋めしました。また、操縦席天窓の後端と胴体間には段差ができます。ここは透明パーツを削ると窓枠のモールドがなくなるので、胴体側にパテを盛って面一に合わせました。ここで窓枠を塗るかどうか迷ったのですが、窓枠を露出させてマスキングし、全体塗装と同時に仕上げる方法を選択しました。

 

☆  ☆  ☆    士 の 字 化 工 作    ☆  ☆  ☆

士の字化工作、まずは主翼を取付けて十の字にします。Be-6は1/72にして翼幅46cmという大物故、気合いを入れて作業しないとなかなか先に進めません。要点は胴体を垂直に、主翼を水平に付けることなので、身の周りにあるものを使ってバランスを出しながら接着して行きます。

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主翼が固まったら継ぎ目を修正し、間髪を入れず尾翼を接着します。普段なら仮組みを繰り返し、接着に踏み切るまで数日掛かるところですが、このキットは合いがしっかりしているので尾翼の水平・垂直が出し易く、スラスラと接着することができました。 
 

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尾翼の接合部の修正も完了し、晴れて士の字になりました。エンジンナセルを持ち上げて上を向かせるという、私にとっては大きな改造をしたので全体のバランスが心配でしたが、結果は大きな破綻はなく、まずまず順調です。さすがにここまで来ると組立ては一段落ですね。元々部品数の少ないキットですが、箱の中にはもうほとんどパーツが残っていません。 
 

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☆  ☆  ☆    小  物    ☆  ☆  ☆

本体が士の字に達したので小物に取り掛かります。小物は地上引き上げ時に使う車輪、および主翼に付くフロートとプロペラ、そして尾部機銃です。このうち車輪はキットには入っていないので自作することにしました。

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実機写真を見ると、メイン車輪が胴体に取り付く部分に凸の字を逆さにした形のBOXが有ります。ない知恵絞ってこの立体の展開図を描き、プラ板に写し取って組立て、エポキシパテで補強しました。次はメイン車輪の支柱。実機写真から読み取ると1/72では直径2mmほどです。プラ棒では弱いと考えアルミ棒を使いました。胴体の曲面に沿って微妙に曲げてやる必要があるのでこの点でもアルミの方が好都合。さらに0.3mmステンレス線を使って機体への固定と車輪取付け用の突起を出しました。最後は尾輪支柱。ここは胴体尾部から細い支柱が3本出て来て先端でひとつにまとまり、ここに尾輪が付きます。少し悩みましたが0.8mm黄銅線やステンレスパイプを使って何とかでっちあげました。

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メイン車輪の支柱:アルミ製  尾輪支柱:黄銅&ステンレス製 

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フロ-トはこのキットを弄りだして一番最初に組立てたものです。本体とは別々に塗装して最後に取付ける予定。フロ-トの右に写っているのは尾部の機銃とそのカバ-です。尾部は本体塗装時の持ち手となる棒を差すので、機銃とカバ-も最後に取付けることになります。
プロペラは1本折れていたのを慎重に接着して何とか再生しました。細くて華奢なので回して遊ぶのはムリです。

☆  ☆  ☆    塗  装    ☆  ☆  ☆

小物が片付いたところで、いよいよ機体の本塗装に入りました。まず全体にサフを吹いて様子を見たところ、特段アラは見当たりません。そこで下面色をスプレーして乾燥後マスキングしました。いつもの小型機なら上面は筆塗りするけれど、このBe-6は私にとっては大物なので上面もスプレーで行きます。

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スプレー塗装はマスキングが命なんですよね。マスキングがいい加減だと境界から塗料が入り込んで後で苦労するので、ここはひとつ面倒でもじっくり時間を掛けてマスキングテープを貼って行きます。特に気を使ったのは翼前縁で、ここは翼厚の中心線上に色の境目が来る様に、何回もやり直しながらテープを貼りました。

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上の写真は上面塗装が終わり、マスキングテープを剥がしたところです。ところどころ塗料の流れ込みがありましたが程度は軽く、少しの修正で済みそうです。これで下面ライトブルー上面グリーンの基本塗装が終わりましたが、この段階ではまだ単調な色合いで、全然本物っぽくありません。この後の仕上げ塗装でどこまで本物に近い雰囲気が出せるかが勝負です。
 
 
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仕上げ塗装、まずはラッカー系塗料だけで塗れる部分を全て塗り上げました。具体的には喫水線の赤、エンジンナセルと排気管周りの銀、および翼前縁の黒です。これだけでも大分引き締まって来ますが、さらに動翼部など、ところどころ機体色のトーンを変えてメリハリを付けました。しかし上の写真では機体色のトーン変えまでははっきりとは写っていませんね。 
 
 
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続いてスミ入れしてデカール貼ってトップコートしました。書いてしまえば簡単だけど、語るも涙・聞くは笑いの大苦戦(うううう)。まず薄く溶いた油彩の黒でスミ入れしたのですが、それが素直に筋彫りを伝って広がってくれないんです。やはり自分で彫った筋彫りだと深さや断面形状が一定でないんでしょうね。次にデカールですがちょっと透け気味な上、プラとの食い付きが悪いです。マークセッターで貼り付けた後、透け気味の部分はエナメルの赤を足してごまかしました。次のトップコートは特段困難なく切り抜けましたが、その後に地獄が待っていました。・・そう、透明部分のマスキング剥がしです。今回は窓枠を残して真の透明部分のみマスキングし、全体塗装で窓枠も一緒に塗装される様にしていました。結果は塗料が漏れまくりで、マスキングを剥がした直後は見るも無残なありさま。思い出したくないので写真は撮っていません。それから先は爪楊枝でこそげ落す、ペーパー掛けで落す、シンナーで拭い落すなどなど、あの手この手で漏れた塗料を落し、最後はヘロヘロにかすれた窓枠を筆塗りして仕上げました。窓枠を残すマスキングは市販されているマスキングセットの様に、1枚の窓を1枚のつながったフィルムで覆うならまだしも、細いマスキングテープを多数使って覆うやりかた(今回の方法)ではどうしてもすき間ができて塗料漏れが防げないことが分かりました。この方法はもう二度と使わないことにします。

 

☆  ☆  ☆    完  成    ☆  ☆  ☆
 
着工から苦節8ヶ月、遂に完成の日を迎えました。最終工程は小物の取付けです。   
 

右写真、左から主車輪、尾輪と尾部機銃、そして右端がフロ-トです。塗装は完了しているので接着はやり直しが効かない一発勝負で緊張しましたが、どうにか上手く行きました。

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完成してみると大型キットだけに、実に堂々としています。今回は筋彫りの凸→凹変換、エンジン大改造、機体内部の再現と大きく3つのテーマにチャレンジし、それぞれ一定の成果を上げられたと思います。塗装にしても下面ライトブルー、上面グリーンとも、ほぼ思い通りの色合いが出て満足しています。難を言えば窓枠の塗装に失敗して、やや粗さが残ってしまったのが残念ですが、もうこれ以上どうしようもありません。本人満足度は窓枠の失敗がなければ満点のところ、惜しくも★4個半に留まりました。

 
本人満足度 ★★★★

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