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展示へ戻る Amodel 1/72

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2016年は前半はスランプで後半は「バス停ジオラマ」を作ったため、飛行機の完成品がありませんでした。2017年に入って飛行機模型作りを再開。数ある在庫から当分はラボーチキンに的を絞ることにして、まずはリハビリのつもりでこのLa-174TKに白羽の矢を立てました。

☆  ☆  ☆    胴体に収まる部品の工作    ☆  ☆  ☆

まずは胴体に鋏み込む部品から手を付けました。このキットの場合、空気取入れ口内部構造体,前脚収納庫,コクピット,および排気ノズルと、小柄な機体にしては胴体に収まる部品は結構多いです。で、取説の順番通りコクピットから始めました。コクピット絡みのパーツは全部で10個。パーツはなかなかシャープなので普通に組立てられるものと信じ込み、個別パーツの状態で塗装を済ませました。それが下・左の写真です。ところがどっこい、これがとんでもない曲者で色々な所が干渉し、そのままでは組めません。まず側壁パネルの下半分が厚過ぎてシートが入りません。次に計器板は幅が大き過ぎ、組んだバスタブに入らないし胴体とも干渉します。さらに後部隔壁は胴体との反りが合わず、センターずれが発生します。こんな調子であちこち有機的に干渉していてそのままでは組立てられません。ううう・・リハビリのつもりがいきなりピンチです。勘が鈍っているのでテキパキとは修正できず、仮組を繰り返して慎重に擦り合わせを重ね、2週間掛けてようやくコクピットが完成しました。時代が下った新世代製品とは言え、そこはやはりAmodel、一筋縄では行きません。いやはや、Amodel健在(作り難さが残っている)で逆に嬉しくなりました。

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続いて前脚庫を組み立てました。これもコクピットと同じく何枚かの板を箱状に組んで行く仕様です。組み立てるとかなり深さがあって確かに前脚が入る実感はあるけれど、その分組み難いです。ここはひとつ高度な成形技術を駆使して、深いバスタブ状の脚庫を一発抜きできなかったのでしょうか。組み立てる側としてはその方が簡単だし、精度も出ると思うんですげどね。おっと、ロシア東欧系キットが好きならそんなこと言っちゃいけませんね。その組み難さこそがキットの持ち味ですから。組み難さの極め付けは脚庫を箱組みする時に前脚も組み入れる仕様になっている点です。下の画像で分かりますでしょうか、前脚の頂点がT字になっていて水平に軸があり、この軸を脚庫左右側壁の穴に嵌め込む仕組みなんです。つまり脚庫を組んだら必ず前脚も付いてしまう訳。こんなに早く前脚が付いてしまうと工作の邪魔になり、後々折ってしまう可能性大です。そこで脚柱を切断して差し込み式に改造し、基部のみを脚庫に組み込むことにしました。

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書いてしまえば簡単だけど実作業は大変。この前脚の改造は私ができる最も細かい作業のひとつです。何とか改造を終えて、切断した基部のみを組み込んで脚庫を仮組みして見ると、基部の幅が大き過ぎて側壁が閉まりません。止む無く基部の幅を縮めていたら軸突起が折れてしまったので黄銅線で軸を再生・・何とも楽しませてくれます。ようやく脚庫を組みますが、板パーツの外周を合わせると脚柱が激しく傾きます。ここは脚柱が真っ直ぐ付くことを優先に組んだため、脚庫の外周はガタガタになりました。 



前脚柱基部



コクピットと前脚庫以外に胴体に挟むのは空気取り入れ口内部構造と排気ノズルの2つ。塗装前に胴体に仮組みしたところ、特段干渉はないのでパーツ段階で塗装を済ませました。これらのパーツはコクピットや前脚庫とは違って素直です。通常、この手の部品は胴体と干渉したり、逆にガタガタで座りが悪かったりしますが、このキットはしっくり来たので幸いでした。


☆  ☆  ☆    胴体の工作    ☆  ☆  ☆

胴体内に収まるパーツが出来たので、各パーツを胴体の片側に接着して行きます。ここで、コクピットと空気取り入れ口内部構造は取付けガイドはあるものの頼りなく、前脚庫と排気ノズルはガイドが全くありません。ガイドが貧弱なのはロシア東欧系キットでは良くあることで、こういう時に私が使う常套手段はエポキシパテを枕にして各パーツを位置決めしつつ固定するというものです。これなら宙に浮く様なパーツでも取り付けられます。さらにエポキシパテはプラに対して接着力があるので取付け強度を十分確保できます。また機首に仕込んだおもりを固定するのにも重宝します。下写真・左、空気取り入れ口内部構造の直後から前脚庫上方にかけて、鉛板を仕込んでありますが、エポキシパテで封じ込めたので完成後に中で外れてカタカタ音がする様な事態は発生しません。中に挟むパーツを全て仕込んだら左右胴体を接着します。位置ズレしない様にセロテープで保持し、さらに輪ゴムで拘束。前脚は作業の邪魔にならない様に抜いてあります。この状態で1週間放置し十分乾燥させました。



左右胴体がくっついたところで接合部の修正工作へと駒を進めました。このキット、Amodelの新世代製品なので作り易いかと思いきや、けっこう手が掛かります。まあそれでも同社の旧製品に比べれば随分良くなりましたが、随所に残っている作り難さはAmodelの個性と理解しましょう。今回の修正ポイントは空気取入れ口内部、前脚庫周辺、および排気口内部です。




まずは空気取入れ口から。上写真左端の接着直後は合わせに段があり、下面にすき間ができています。こう言う中規模の修正が必要なときは私はエポキシパテを好んで使います。写真中央はエポキシパテを塗り付けたところで、右端が乾燥後にペーパー掛けした状態。左右胴体は合いが悪く、かなり広範囲に段差ができるので筋彫りが消えるのを気にせず、豪快に削りました。




続いて前脚庫です。機首下面にすき間ができるのは脚庫の幅が若干大きいためです。脚庫を削る手もありましたが左右対称が崩れると面倒なのでそのまま接着し、後からすき間を埋めました。どうせ脚庫の全周に渡って、脚庫のエッヂと胴体を同一面に仕上げるためにはパテ盛りが避けられません。上写真・中央が例によってエポキシパテを塗り付けた状態、右端が乾燥後ペーパー掛けした仮仕上げの状態です。ここでもペーパー掛けした周辺の筋彫りが消えました。このキットは筋彫り(凹)が浅めなので後で彫り直すことにします。



 
最後は排気口内部の修正。接着直後は上写真左端のごとくエンジンパイプと左右胴体がバラバラで、大きな穴もあります。この穴は胴体を閉める前にエンジンパイプの上にプラ板を被せて塞ぎました。写真で白く見えているのがプラ板です。そしてここにもエポキシパテを塗り付けて乾燥後ペーパー掛けし、上写真右端の状態まで持って来ました。

続いて胴体全体の段差修正と消えた筋彫りの再生を実施しました。下の写真、左が胴体接着直後、右が段差修正後です。
 



このキットの胴体パーツは左右で長さは合っていますが、高さに差があって左舷の方が一段低いです。従ってどんなに頑張って調整しても必ず段差ができます。それでも極力段差が少なく済む様に探って行くと、下面を合わせると機首と垂直尾翼がほぼ合って、上面のみに段差が集中することが分かりました。そこでその様に胴体左右を接着し、上面左舷にパテを盛って段差をならしました。下面は段差はないものの、接合線がかなりきつく出たのでところどころパテ盛りし、上面共々情け容赦なくガリガリペーパー掛けして全周の修正工作を終えました。


上にも書いた通り、このキットの筋彫りは凹ながら浅いため、段差修正や接合線を消す過程で筋彫りも消えます。そこでペーパー掛け後に全体の筋彫りを彫り直しました。上の写真は筋彫りを彫り直した状態。パテ盛りした部分の筋彫りが少しヘロヘロですが、この先、下地塗装が終わった段階で再度見直す予定です。


☆  ☆  ☆   コクピットの仕上げとキャノピー   ☆  ☆  ☆

さて、胴体の工作が済んだら、この段階でコクピットを仕上げ、さらに士の字化する前にキャノピーの取付けと接合部の修正まで済ませてしまいます。




まずはコクピットを外から見て行きましょう。上写真・左は胴体左右を接着した直後の状態で、後部隔壁上端と胴体の間にすき間があります。上写真・中央はそのすき間を埋め、さらに胴体の接合線を消した状態。上写真・右は計器板より前方(機首側)に上蓋を乗せ、シートを取付けたところで、これでコクピットの工作は完了です。




続いてキャノピーの取付け。キャノピーと胴体の合いはあまり良くなくて、上写真・左ではまあまあフィットしている様に写っているけれど、実物を見るとかなりすき間があります。上写真・中央はわざと溶剤を飛ばしてドロドロにしたグレーの塗料ですき間を塞いだところ。そのドロドロ塗料が乾燥してからペーパー掛けして段差をなくし、窓枠と同色で裾を塗って仮仕上げしたのが右端の写真です。翼とキャノピーの位置関係によりますが、この機体の場合は士の字化の後だと翼が邪魔でこの修正作業がやり難いので、この段階でキャノピーを取付けました。


☆  ☆  ☆    士の字化工作    ☆  ☆  ☆

いよいよ翼を胴体に取付ける「士の字化」の工程にたどり着きました。士の字化が済むと飛行機の形が出来上がるのでグッと完成に近づいた気分になります。ですがこのキットは筋彫りが浅いので、はやる気持ちを抑え、翼単体で筋彫りを増し彫りしてから士の字化に進みます。

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機名、La-174TKの”TK”とは「薄翼」を意味します。翼厚が薄いほど前面面積が減り、従って空気抵抗が減り、その分速度が上がります。後退翼が実用化される前は薄翼化が高速化の有力な手段だったんですね。キットはその薄翼を良く再現していて、上下分割のない一体ものです。ただし中翼なので左右は別々。水平尾翼も同様で合計4枚の翼を胴体に取付けて行きます。主翼は取付けガイドはあるものの上反角まではガイドされないので、手近な機材を駆使して上反角を決め、接着剤が固まるまで養生します。(上写真・右)

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続いて水平尾翼ですが、垂直尾翼に付いている取付け基部が前後にズレていて、水平尾翼を正しい位置に付けると、左舷は前方、右舷は後方にすき間ができます。このすき間は接着剤や塗料では埋め切れないほど大きいのでパテを使いました。上写真・左がパテ盛り直後と修正後です。主翼の取付け部にも相応のすき間ができましたが、こちらはパテの使用には至らず、瞬着と塗料で何とかなりました。(上写真・右) これでめでたく士の字到達です。


☆  ☆  ☆    小 物    ☆  ☆  ☆

士の字になったら小物を片付けるのは私が自分のスタイルとして守っている制作手順です。本体の塗装が済むと完成が見えて来ますが、そのときまだ小物が手付かずだと気持ちが萎えてしまうので、本体の塗装の前に必ず小物を仕上げる様にしています。ここで言う小物とは本体塗装後に最後に取付ける部品を言います。必然的に脚まわりとアンテナ、それにピトー管ですが、下写真・左上端のパーツは空気取入れ口内部に付く小さなドームです。今回は機首の空気取入れ口に棒を差し込んで本体塗装の持ち手にするので、このドームは後付けになりました。




☆  ☆  ☆    基本塗装    ☆  ☆  ☆

以上で工作はひとまず完了。ここから先はスプレーを使って大面積を塗りあげる本格的な塗装工程に入ります。この工程は大きく分けて下地塗装および本塗装の2つの工程から成ります。

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まずは下地塗装。パテ代わりに使ったグレーの塗料と同色の缶スプレーを全体に吹き付けました。1回目の吹き付けではあちこちアラが出たので、全体的に1000番の耐水ペーパーを掛けて地ならしし、2回目でもまだ残っていたアラを部分的に修正し、3回目の吹き付けでようやく下地が完成しました。上写真・左は1回目+ペーパー掛け、右は3回目吹き付け後です。

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次に本塗装。クレオスの73番、エアクラフトグレーを全面に吹き付けます。一度に吹き付け過ぎると塗料がダブついてたれて来るので、様子を見ながら少しずつ吹いて行くのがコツです。それが済んだらスプレーの出番はここまでで、後はマスキングテープと筆を使って動翼部や主要なパネルをトーンの違うグレーで塗り分け、メリハリを付けます。銀塗装の場合は実機でもトーンの違いがあるので、色調の異なる銀塗料を駆使してかなりメリハリを付けるけれど、グレー塗装の実機には基本的にトーンの違いはありません。従ってグレー塗装の場合のトーン変えは模型を引き立たせるための色彩的なデフォルメなので、銀塗装の時ほどメリハリを強調せずに抑え気味にします。上写真・左は73番単色、右はトーン変え後です。トーン変え以外にも空気取入れ口内部や脚庫、排気口、翼端灯などを塗りあげて、これでラッカーによる塗装は完了。後はエナメルや油絵の具による仕上げ塗装を残すのみとなりました。


☆  ☆  ☆    仕上げ塗装    ☆  ☆  ☆

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仕上げ塗装は (1)墨入れ,(2)ウェザリング,(3)デカール貼り,(4)トップコート の4工程で構成されます。まず墨入れは油絵具の黒をペトロールという溶剤で溶いて筋彫りに流し込みました。キットの筋彫りがしっかりしていると墨入れした時スーッと気持ちよく墨が流れていくのですが、この作例の様に浅い筋彫りを自分で増し彫りした場合は、筋彫りの幅や深さが不均一と見えて思う様に墨が走ってくれません。ここは短気を起こさず、根気よく時間を掛けて全体に墨をまわしました。次にウェザリングは排気口周辺とその後方にタミヤのウェザリングマスターを擦り付けて焼けた感じにして見ました。この辺は実機のカラー写真が見付からなかったので想像でやっています。まあ、模型ですから、グレーのトーン変えと同様、色彩的なデフォルメというところです。続いてデカール貼りはキット付属のデカールをそのまま使いました。Amodel のデカールは上質で発色も良く、トップコートを掛けても縮れないので大変助かります。デカールを貼ったら一晩寝かせて十分乾燥させ、トップコートを掛けて仕上げ塗装完了。トップコートによって墨入れ、ウェザリング、およびデカールが保護され、さらに全体のツヤが整います。


☆  ☆  ☆    完  成    ☆  ☆  ☆

最後は小物を取付けて完成ですが、その小物付けで難航しました。小物は大した量ではなく、脚周りとアンテナ類のみです。ところがどのパーツも取付けガイドは無いに等しく、位置決めに苦労します。特に主脚は胴体から斜めに張り出した微妙な位置に固定しなければなりません。左右対称や接地時の傾きにも気を配りながら、結局脚柱の取付けだけで半日掛かりました。そして2017年のゴールデンウィーク最終日の5月7日、残りのパーツを取付けて完成となりました。どのパーツも接着面積が狭いので、接着剤がはみ出さない様に細心の注意が必要。最後に取付けたアンテナはキャノピーの透明部分に点付けなので特に緊張しました。



振り返って見ると着工から完成まで3か月半、これは私にしては速い方でした。途中苦労したところもあったけれど、簡易インジェクションキットにパチピタの精度を望むのは無理というもの。こうしてきちんと形(かたち)になったのだから良いキットと言えるでしょう。

本人満足度 ★★★



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